社会政策
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8 巻 , 3 号
社会政策 第8巻第3号(通巻第25号)
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巻頭言
特集 変わる公共部門の労働
  • 阿部 誠
    2017 年 8 巻 3 号 p. 5-13
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     最近,公共部門の効率化,コスト削減をめざして,民営化,業務の外部委託などが進められるとともに,公務員の人事・給与制度の見直しが行われている。公共部門のこうした変化は,正職員の減少と非常勤公務員の増加をもたらし,官製ワーキングプア問題をひきおこしている。社会政策学会第132回大会では,「変わる公共部門の労働」を共通論題として,公共部門における労働の変化について多面的に議論した。 本特集では,公務員人事制度の見直しによる公務労働の公共性,専門性への影響,自治体での人事評価導入の実態,非正規公務員や外部委託の実態と官製ワーキングプア問題,保育部門の民営化による保育労働者の変化などについて論じている。大会では,公務労働の公共性と専門性,求められる公共サービスの変化と「公務労働」のあり方,自治体による人事評価システムの相違と組合規制の関係,公共部門の見直しがジェンダーへ及ぼす影響などが議論された。

  • 松尾 孝一
    2017 年 8 巻 3 号 p. 14-30
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     本論文は,近年の日本の公務部門改革,特に公務員制度改革を契機とした人事管理改革の動向を踏まえた上で,それらが日本の公務員の働き方や公務部門の雇用構造,公務労働の性格などをどのように変化させてきたのかについて検討するものである。 まず本論文では,公務労働の基本的性格について,従来からの議論や民間との相違などを踏まえながら考察する。また日本の公務員制度や公務員数などについても確認する。その上で近年の公務改革が公務部門の雇用構造をどのように変化させてきたのかについて指摘する。 さらに,従来の公務員人事管理の特徴を整理した上で,2000年前後からの公務員制度改革の背景と流れを概観し,その改革が公務員人事管理をどのように変化させつつあるのかについて述べる。 最後に,以上のような変化が公務労働の性格をどのように変化させ,その変化が公務労働の公共性という見地からどのような問題を内包しているのかについて論じる。

  • 黒田 兼一
    2017 年 8 巻 3 号 p. 31-46
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     2014年4月,地方自治体に人事評価制度の導入を義務づける地方公務員法の一部が改正された。本(2016)年4月から完全実施されている。既に2009年から国家公務員には義務づけられているので,すべての公務員に人事評価制度が適用されることになったのである。 これまでも勤務評定(勤務成績の評定)として存在していたが,これを敢えて改正したのである。それはなぜか。 今回の人事評価制度の導入は,それ自体が突然に単独で出てきたわけではもちろんない。国家公務員を含む公務員の仕事と処遇のあり方を根本的に変えていこうという,少なくともここ数十年の動きの「総仕上げ」的なものとみなしうる。 本論文では,1)提起されている人事評価制度の内容と特徴,2)東京都,神奈川県,大阪府,京都府の人事評価制度の実態と特徴,3)労働組合の対応等に論点を絞り,地方公務員の働き方の変化とその問題点を考察する。

  • 川村 雅則
    2017 年 8 巻 3 号 p. 47-61
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     公共サービスの担い手が「多様化」している。しかしながらその多様化は,雇用の非正規化であり,ワーキングプア化ではないか。自治体に雇われて働く臨時・非常勤職員(非正規公務員)と,自治体が発注する仕事(委託事業,指定管理者制度,公共事業)で働く労働者(公共民間労働者)を対象に行ってきた調査結果に基づきながら,本稿ではそのことを論じている。労使が対等の雇用関係と異なり,公務員は,公法上の任用関係の下にあるとされる。しかし正規の公務員と異なり,非正規公務員には法制度上の保護も代償措置もない。彼らは正規の公務員とも民間の非正規労働者とも異なる,法の狭間の存在である。公共民間労働者の雇用,労働条件は,直接の使用者はもちろんのこと,発注者である自治体の発注条件に強く制約を受ける。価格を重視した入札制度や事業者の選定が問題を深刻化させている。自治体の存在意義にも反するような,かかる官製のワーキングプア問題の解決が急がれる。

  • ―公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽―
    萩原 久美子
    2017 年 8 巻 3 号 p. 62-78
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     福祉国家の展開過程において公共セクターは女性をよりよい雇用へと結びつけ,ジェンダー平等を促進する役割を果たしてきた。しかし,緊縮財政政策と世界的な景気後退によって女性の多い社会サービス分野の再編が進んでおり,公共セクターとジェンダー平等との関係は変化しようとしている。本稿では供給主体の多元化と市場化政策によって再編された日本の保育分野に着目し,公共セクターが政策実行者としても雇用者としてもケアワークの労働力編成に対するジェンダー変革的機能を弱化させ,ジェンダー不平等を拡大させていると主張する。第一に,保育士の社会的経済的評価の低下は2000年代以降に顕在化したものであり,公共セクターの保育サービス供給を縮小させる過程で公務員保育士の集団的交渉力を弱化させつつ保育士をコストとして削減対象としていったことを論じる。第二に,大阪市の保育士給料表を事例として公共セクターが積極的にジェンダー格差を拡大していったことを明らかにする。

  • ―第132回社会政策学会共通論題「変わる公共部門の労働」討論者コメント―
    上林 陽治
    2017 年 8 巻 3 号 p. 79-88
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     今日の公共部門の労働の変化の方向性を端的に表わせば,それは「非正規化」と「市場化」である。地方自治体を例にとれば,住民福祉の前線にある市区町村に勤務する職員の3人に1人は,臨時・非常勤職員と呼ばれる非正規公務員である。さらに,業務委託や指定管理者制度を通じた公共サービスの民営化も進展している。 公共部門の今日の状況は,「正規非正規複合体」の地方自治体が,「行政民間複合体」体制で,非正規公務員・非正規労働者を使って公共サービスを展開しているといえよう。 その中で公共部門の労働に携わる正規公務員は,ますます「公共性」を喪失し,住民に寄り添うことができなくなってきている。さらには定員削減下において職務無限定に人事異動を進めた結果,与えられた自分の職務に閉じこもり,他者への関心さえ失いつつある。 本稿では,こうした公務労働の変質の状況を「公共性」,「専門性・専門性」のキーワードを軸に,試論としてスケッチした。

小特集■障害者雇用の質的向上
  • ―取材,調査および日韓比較を交えて―
    渡邊 幸良
    2017 年 8 巻 3 号 p. 89-91
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
  • ―障害者雇用を通じたディーセントワークの実現―
    江本 純子
    2017 年 8 巻 3 号 p. 92-105
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     本稿は,障害者雇用の進むべき方向性の再考,実証を目的とする。 障害者雇用政策は,2000年前後から,関連法・制度改正を重ね,雇用の量的拡大を図ってきた。2013年の法改正では,障害者権利条約に伴い,質的にも拡充を図っており,障害者雇用政策は,大きな転換点にあるが,質の保証は,十分とはいえない。なぜなら,障害者雇用の量と質を拡充するには,当該障害者のみならず,すべての人に有益な社会,共生社会を目指す必要がある。 筆者は,障害者雇用がディーセントワークの実現につながると考え,職場における効用を調査した。結果以下3点が明確になった。第1に,障害者雇用の効用は,仕事の役割分担から,新規事業開拓までさまざまある,第2に,効用をもたらすためには,支援機関・制度の活用と障害者雇用に関する発想転換が重要である。第3に,障害者雇用促進には,個人から政策レベルまで一貫した制度が必要である。本稿は,この調査結果をもとに報告する。

  • South Korea’s Disabled People Employment Promotion System from the QOL Viewpoint
    權 偕珍
    2017 年 8 巻 3 号 p. 106-119
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     韓国の障害者雇用促進制度・政策の設計や評価を行う際に,当事者である障害者自身のQOLを考慮して評価した研究は見当たらない。障害者の雇用は障害者のQOLに影響を与える重要な要因の一つであり,したがって,障害者雇用促進制度・政策をQOLの観点に基づいて分析することが必要であると考えられる。そこで,本研究では,第1に,韓国の障害者雇用法制の変遷,内容や現状を把握し,その特徴について整理する。第2に,QOLの観点に基づいた障害者雇用促進制度・政策評価尺度を用いて韓国の障害者雇用促進制度・政策を評価する。第3に,評価結果を踏まえ,QOLの観点に基づいた制度・政策を考察する。評価の結果,QOL―EPATの領域のうち,「心身の健康」の領域が53.06%で最も低く,この領域の項目はいずれも3点未満で,「雇用の安定性」や「生活の安定性」の領域の項目と比べて低い評価であることから,「心身の健康」に関する制度・政策の整備が必要であることが明らかになった。

投稿論文
  • ―『救済事業調査要項』(1911年)に焦点をあてて―
    中根 真
    2017 年 8 巻 3 号 p. 120-130
    発行日: 2017/03/10
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

     本稿は,20世紀初頭日本において国家レベルの社会政策が構想化される際,保育事業がどのように位置づけられたのか,また,これに関与した社会事業家の影響を明らかにする。 方法として『救済事業調査要項』(1911年)に関する文献調査を実施した。その結果,育児事業,幼児保育事業,児童虐待予防事業,貧児教育の概要が明らかになった。そこで,児童保護事業に占める保育事業の位置づけと内務省嘱託の影響を分析し,考察した。 結論として,第1に保育事業が「育児事業の病的膨張」の是正策として有望視され,経費節減と貧児の家庭養育を実現する「一挙両得の策」に位置づけられていた。第2に内務省嘱託・生江孝之が『要項』の幼児保育事業を執筆したと推察すれば,神戸市における一社会事業嘱託/社会事業家としての保育事業経験や欧米の知見が国家レベルの社会政策構想に反映されていったものと考えられる。

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