2017 年 9 巻 2 号 p. 101-112
我が国において最初に公的対人サービスを民営化した介護保険制度を題材に,そのような民営化が市区町村を単位とする地域に及ぼす影響を,サービス供給組織の広域化との関わりにおいて検討した。調査対象は,東京都内で住民の所得水準が異なる2つの区で活動する介護保険指定事業者であり,2005年と2012年に実施した調査のデータを用いた。その結果,低所得の住民が多く居住する地域では,広域型のサービス供給組織と共存しながら地域密着型のサービス組織が重要な役割を果たしており,後者のようなサービス供給組織を支援することは,この種の地域の重要課題であると考えられた。いっぽう住民の所得水準が高い地域ではサービス供給組織の広域化が進み,地域との密着感は薄く,クリームスキミングが行われている様子も観察され,この種の地域では,地方自治体の影響力が低下していることをふまえたうえでの政策展開が求められることを指摘した。