社会政策
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特集■福祉の市場化を問う
わが国における高齢者福祉政策の変遷と「福祉の市場化」
―介護保険制度の根本的課題―
森 詩恵
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2018 年 9 巻 3 号 p. 16-28

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抄録

 本稿の目的は,「福祉の市場化」という視点から,わが国の高齢者福祉政策の変遷を再検討し,介護保険制度の現状と根本的課題を提起することである。本稿の結論は以下の4点である。第一は,高齢者福祉政策における「福祉の市場化」は1980年代半ばからのシルバービジネスの登場と措置制度下での民間事業者への委託実施,2000年からの介護保険制度導入という二段階で実施された。第二に,介護保険制度導入により介護サービス事業者だけでなく,ケアプラン作成機関,訪問調査等にも民間事業者が参入し,これまで行政が担ってきた「相談業務」など介護サービス供給における基盤部分でも「福祉の市場化」が進んでいる。第三に,介護保険制度の根本的問題は,公的責任のもとでの利用者の生活保障がなされていない点である。第四は,2014年改正では地域や民間事業者の活用と高齢者の社会参加が求められ,地域包括ケアシステムという名のもとで「日本型福祉社会」論の再来の危険をはらんでいることが懸念される点である。

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