抄録
現在国内で普及しているメトリクスに関する一般書籍・論文等は,1980年代〜90年代に測定されたプログラム・ソースコードを中心とした下流フェーズでのメトリクス測定結果が多く,プロジェクト全体や上流フェーズに関するメトリクスが十分に研究され普及しているとは言えない.また,内容としてプロジェクトにおける成果物品質やリスク・マネジメントと連動したメトリクス測定も数が少ないのが実情である.更には「時間がない」「測定対象が不明」「コストがかかる」等の課題から継続したメトリクス収集がしにくいという状況も散見される.本稿は,プロジェクト上流フェーズでの品質インスペクション(QI:Quality Inspection)を通じて様々な成果物の品質検証・欠陥検出を行った事例と,メトリクス測定プロセスのあり方と測定結果の活用について考察する.筆者らが経験した「Quack Model」という測定したメトリクス・データをプロジェクト・リスク・マネジメントへ連動させるプロセス事例やメトリクス測定の経済性についても述べる.