抄録
プロジェクトマネジメントの主題の1つとして,計画の精度を向上させることがある.計画の精度向上のためには,プロジェクト内で複雑に関係している各種現象を,長期的および広範囲な視野を持ち,観察する必要がある.しかし,現在のプロジェクトの場では,細部を追及する分析的思考にもとづいた評価方法がとられている.プロジェクト内に存在する要素は,互いに従属しあいながら,時系列にしたがって変化していく.このような変化を静的に分析することには当然限界が存在する.このため,プロジェクトの評価を適切に行うためには,各要素を動的に変動する「変化の連続」として捉え,全体の挙動を把握するシステム思考が必要となる.システム思考によって,過程の中のどの部分に問題を発生させる原因が存在するかを分析しなければならない.しかし,プロジェクト評価にはシステム思考を反映した動的な評価手法が確立されていない.本研究では,ソフトウェア開発プロジェクトの動的な評価のために,システムダイナミクスを用いたシミュレーションモデルを記述し,提案する.提案するモデルは,まず必要最小限の要素を用いて,ウォータフォール型開発をモデル化し,基本モデルを記述した.その後,基本モデルに対して,プロジェクトの要素を組み込み,拡張を行った.これにより,プロジェクト評価における動的な評価手法の不在を解決する.