抄録
本稿では,情報システムの運用保守において,体制や価値観から作られている人間系システムに着目し,表面的には抽出し難い潜在的なリスクについて議論する.はじめに,フィールドワークを応用したリスクマネジメントの実行方法について説明する.続いて,運用保守プロジェクトで前述のリスクマネジメントを実行した事例を基に,人間とリスクの関係を検証した結果,および2つのプロジェクトを比較分析した結果について報告する.比較により,プロジェクトの当事者にとっては当たり前となっている行動や価値観が見えないところでリスクに結びついているという気付きを促した.第三者がフィールドワークを応用しプロジェクトのリスクとそのトリガを見せることで,孤立しがちな運用保守プロジェクト間を橋渡しし,より効果的なリスクマネジメントが実行できること確認した.