抄録
プロジェクトとは「独自のプロダクト,サービス,所産を創造するために実施される有期性の業務」と定義され,その特徴は「有期性」「独自性」「段階的詳細化」とされている.この中で特にプロジェクトを困難にし,リスクを増大させる要因は「独自性」である.しかし,過去の膨大なプロジェクト資産から生まれたベストプラクティス,またプロジェクトをサポートする社内組織でノウハウのナレッジ化が整備されてきており,プロジェクトマネージャはそれらを有効活用することでプロジェクトをより効率的かつ安全に推進出来るようになってきた.一例を挙げると,標準WBS,テストにおけるテスト項目数の指標や摘出すべき不良数,プロジェクトメンバに求めるべき妥当な生産性指標,顧客と取り交わしておくべき事項を定めた書類のテンプレートなどである.本稿ではプロジェクトの現場において社内に蓄積・整備された様々なナレッジを活用しながら,素早くプロジェクト全体を鳥瞰し,ステークホルダーとプロジェクト状況の可視化をお互いに行う事で,独自性の軽減とリスクを回避したITプロジェクト事例を通じてその効果について考察する.