抄録
システム構築プロジェクトにおいては,QCDの観点でステークホルダと事前に共通認識・合意形成が困難な場面に遭遇する,顧客は要件未確定な部分がある中で全体の費用とスケジュールを確定させたく,他方ベンダはあいまいな要件での一括見積は避けたいとする,拮抗状態が見られることである.これらは,PMBOKにある段階毎にスコープを調整しながら見積の粒度・精度を段階的に絞り込むといった段階的見積の考え方が未だ一般的ではなく,プロジェクト途中の要件変更などがどの程度開発スケジュールや費用に影響を与えるのかの,可視化・共有化が十分でないことが一つの背景と考えられる.このような中,本論文ではその一解決策として顧客と共有する規模変更管理を基にしたプロジェクト遂行が有効であると仮説をたて,実際にプロジェクトに適用した結果を元にその有効性を考察する.