抄録
大規模で複雑なプロジェクトは,異種混交性の高い集合的協働生産活動として捉えることができる.そのプロジェクトを担当するPMは組織や組織従業員にとって意味ある集合的協働生産活動のドラマづくりを行なわねばならない.プロジェクト場を複数の局所的物語が並行して進む舞台とみなすならば,PMにはドラマの筋書き作りや役の布陣計画ならびに参加主体への説明や翻訳など,監督としての振る舞いを可能にする知識や技能が求められる.これらの技能は実務現場におけるガイドされた参加やインフォーマルな語り合いにより醸成されるが,現在の実務現場ではこのような学びを醸成する環境が崩壊している.そこで,この技能の学びと協働生産活動を支援する一手段として,役割主体の仕事上の"見え"を語り合うナラティヴ・アプローチを適用した事例を紹介した.