抄録
本報告の目的は,プロジェクトマネジメント学会誌,組織科学,日本経営学会誌,経営行動科学に掲載されたプロジェクトに関する論文をレビューすることで,近年の日本のプロジェクト研究を概観し,今後の研究の方向性を示すことである.第1に,文献レビューでは,依拠している理論基盤,プロジェクトの捉え方と分析単位,調査対象プロジェクトの産業と分析概念について整理する.第2に,日本のプロジェクト研究の限界を指摘した上で,今後の研究の方向性を提示する.今後の研究の方向性として提示されることは,一時的組織としてのプロジェクト,文脈,分析視角と現象の相似性という視点からの理論化,調査実施の必要性である.第3に,その方向性に沿う研究群として,多くの日本のプロジェクト研究とは対照的な研究群である北欧学派プロジェクト研究の概要を紹介する.これらの段階を経て,北欧学派プロジェクト研究を内在的に考察していく必要性が主張される.