抄録
本論文ではプロジェクト開始時における,迅速,簡易,客観的な見積り要求に対応し,かつ,カスタマイズ可能な概算工数見積りモデルを提案する.従来の係数モデルはパラメータおよび係数値等が不変であるが,当モデルはカスタマイズ可能なモデルとして新規性がある.また,柔軟な対応能力の高い手法として有用性がある.常に進化するIT業界において,最新の状況を反映するためモデルは見直しをかけられるべきであり,またプロジェクト状況に応じた変更がなされるべきであるため,パラメータおよび係数値の見直し方法を提示する.本手法を以下に示す.(1)プロジェクト分析を行い,標準WBSを作成する(2)規模と難易度要因のパラメータを定義する(3)難易度係数をWBSより求め,難易度要因を難易度係数を用いて規模に変換する(4)規模を工数に変換するための工数係数を求める.この工数係数のカスタマイズ方法を提示する.(5)工数係数により,規模と規模で表された難易度をプロジェクトの全体工数に変換する.本手法を実際のプロジェクトの概算工数見積りに適用した.算出工数と実工数の差は10%以内であり,有効な算出手法であることが実証された.