抄録
プロジェクトは人により構成され,その成否要因もプロジェクトを構成する人,プロジェクトマネージャ(PM)に依存する部分が多い.一方,プロジェクト組織の発達は,まず見える化し共通の状況認識ができる状態(COP: Common Operational Picture)を共有し,次に役割を決めてチームワークを活用した組織運営(協創)を行い,そして全体最適を意識した組織(自律的同期)へと進化することが考えられる.プロジェクトの成功に向けて,リスク審査や育成等の失敗プロジェクトの発生抑止策が進められているが,収束していない状況である.そこで,本稿ではPMと失敗対策の効果に着目した.失敗プロジェクトでは,組織風土・スキルが未成熟な状況下で形骸化した権限委譲を行うなど,PMスタイルとプロジェクト情勢との不適合が考察される.プロジェクトの情勢グループ・チームの状況に合わせてPMスタイルを適用することが必要である.また,失敗対策として,管理強化,周知徹底教育訓練が考えられるが,これら教訓を十分に活用するには,管理強化の負の要素の理解,知識共有の改善,実践に即した育成内容の向上等が必要である.特に,失敗事例・教訓の活用には知識化・当事者の生の声の反映が欠かせない.