抄録
日本においてプロジェクトマネジメントという概念が認知され始めて既に30年以上が経過している.この考え方や手法がエンジニアリング業界を中心に広まってきたことはすでに周知のとおりである.しかし,現在のプロジェクトマネジメントの概念は,当初の範囲を大きく越えて経営の領域にまで広がってきている.企業としては個々のプロジェクトの成功を追及するだけでなく,それぞれのプロジェクトが成功した場合の企業価値向上への貢献度,あるいは失敗した場合の影響をできるだけ正確に把握し,プロジェクト実施・継続の是非を検討する「プロジェクトガバナンス」の重要性が認識されるようになってきた.本稿ではその「プロジェクトガバナンス」の日本企業における実態についてプロジェクトと経営の観点から考察する.