抄録
X線 Computed Tomography(CT)法を用いた冷凍食品内部の氷結晶の分布可視化に続き、解凍方法による食品内部の様子の違いを観察した。冷凍した食品を解凍すると、食品本来の食感や栄養が損なわれることがあり、この劣化は、食品内に含まれる氷結晶が解けて栄養素を含む水分(ドリップ)として外部へ流出することが原因と推測している。ドリップが流出することで、食品内部に氷結晶が抜けた跡(ボイド)が生じると推測されるが、解凍直後の食品内部を高分解能で観察した事例はない。そこで今回、解凍でドリップが流出した牛肉のボイド観察を目的に、複数の方法で解凍した試料の CT 観察を実施した。その結果、いずれの試料でも、組織内部に氷結晶が抜けた跡は認めらなかった。このため、牛肉ではドリップが流出しても、空いた空間は周辺組織に押し潰されて消失し、ボイドとしては残らないと判断した。