抄録
樹脂の破壊機構のひとつに、応力下で各種薬剤と接触してクレーズやクラックを発生する溶剤ストレスクレージング(SSC: Solvent Stress Crazing)がある。その破壊メカニズムについては分子鎖間への薬剤分子の拡散による応力緩和とされているが、詳細な構造解析を行った例は少ない。そこで、SSC による樹脂および薬剤分子の凝集構造変化を明らかにすることを目的に、放射光X線小角散乱(SAXS)測定による構造解析を試みた。食器用合成洗剤により SSC が発生した耐衝撃性ポリスチレン(PS-HI)では、リング状またはアーク状の強い散乱が観察され、洗剤成分である界面活性剤分子が凝集構造を形成したと考えられる。