抄録
絶縁体であるため光電子分光法で電子構造の評価が困難な誘電体試料の表面に金属薄膜を成膜し、硬X線光電子分光を用いて電子構造の評価を試みた。結果、チャージアップの影響なく誘電体の内殻スペクトルの測定が可能となり、表面に成膜した金属薄膜種に依存して内殻スペクトルのエネルギー位置の変化を確認した。金属の仕事関数と変化量に相関があることから、観測したエネルギー位置の変化は金属/誘電体界面のエネルギー障壁(誘電体のフェルミ準位)の変化に対応するものと考えられ、本手法により金属/誘電体界面の電子構造を評価できる可能性が示された。また酸素欠損の生成による金属/誘電体界面の電子構造(誘電体のフェルミ準位)の変化も確認することができた。しかし、本手法を多結晶体試料に適用する場合には表面加工等の課題があり、定量的な議論のためにはさらなる検証が必要である。