抄録
本測定は、純鉄上に高温酸化により形成するウスタイト皮膜 (FeO) が等温相変態(Fe3O4 の析出+共析変態)する際に酸化皮膜中に導入される変態応力と、その厚さ方向の分布の時間変化を侵入深さ制御 sin2ψ 法を用いてその場測定することを目標とした一連の研究に属する。本測定に先立って 2019A1811、2019A1847 において測定条件(X線のエネルギー、7 keV、PILATUS 300K、試料の面内併進揺動)を確立した。本測定では高温ステージ ANTON PAAR DHS1100 を組み合わせた測定を行って、純鉄の高温酸化中とその後の等温相変態中に、形成した酸化皮膜中に導入される成長応力および変態応力の厚さ方向の分布を十分な精度でその場測定した。酸化皮膜表面には、(1)形成初期から引張応力が導入され、皮膜の内部に向かって応力値が低下すること、すなわち酸化皮膜中には応力勾配が存在すること、さらに、(2)等温変態中には共析変態に伴って圧縮応力が導入されるが、それはその後緩和されること、(3)皮膜表面の引張応力は、共析変態に影響を受けないことが明らかになった。