SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
Section B
鉄上に形成するウスタイト皮膜の相変態に伴う皮膜中の応力変化挙動 IV
林 重成山ノ内 友里香林 功輔日高 康善
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2024 年 12 巻 4 号 p. 230-232

詳細
抄録
 本測定は、純鉄上に高温酸化にて形成させたウスタイト皮膜 (FeO) が等温相変態(Fe3O4 の析出+共析変態)する際に酸化皮膜中に形成する Fe3O4 相中の応力を高温その場測定し、酸化皮膜中に導入される残留応力の時間変化を深さ方向に分解して取得することを目的とする一連の研究に属する。著者らはこれまでに、侵入深さ制御 sin2ψ 法を用いた残留応力の高温その場測定法を 2019A1811、2019A1847、2020A1771 より確立した。2020A1771 では、高温ステージ ANTON PAAR DHS1100 を組み合わせた測定を行って、純鉄の高温酸化中とその後の等温相変態中に、形成した酸化皮膜中に導入される成長応力および変態応力の厚さ方向の分布を十分な精度でその場測定することに成功した。一方、2020A1771 では、形成させた酸化皮膜がX線の侵入深さよりも厚かったため、酸化皮膜全体からの情報を取得することが出来なかった。そこで本研究では、形成させる酸化皮膜を薄くすることにより、皮膜全体からの応力情報とその時間変化を測定した。今回の測定では、酸化皮膜表面から十分な回折信号が得られず、表面の応力状態を取得できなかったが、それ以外の深さ領域では応力測定が可能であった。得られた酸化皮膜の厚さ方向の応力分布は、皮膜が厚い場合と類似するが、厚い酸化皮膜の測定で変態後期に認められた応力緩和は、薄い酸化皮膜の場合には認められなかった。
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top