抄録
光化学系 II(PSII)は、植物やシアノバクテリアなどのチラコイド膜内に存在する膜蛋白質複合体で、太陽の光エネルギーを吸収して電荷分離・電子伝達反応を行うと共に、酸素発生中心である Mn4CaO5 クラスターで水を分解して酸素分子とプロトンを放出する。PSII の水分解反応及びプロトン放出機構を明らかにするためには、PSII 内の水素位置を同定することが重要な課題となる。しかし、これまでの研究で PSII の詳細な立体構造及びその構造変化が調べられているが、水素位置の同定は未だ行えていない。本研究では、水素位置の同定が容易とされる中性子結晶構造解析を行うため、磁場配向法によって複数の PSII 単結晶を配向させるための磁場印加条件を検討すると共に、作製した大型 PSII 単結晶の品質を BL38B1 での回折実験で評価した。