SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
Section B
アイソタクティックポリプロピレンの高温溶融状態におけるメモリー効果と結晶融解構造に関する研究(Ⅲ)
伊村 宏之山下 友義
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 8 巻 2 号 p. 361-367

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抄録
 アイソタクティックポリプロピレンの昇温過程(50 °C~200 °C)における WAXS/SAXS 同時測定を行い、結晶の融解過程における詳細な解析を実施した。その結果、ラメラ間周期長の逆数プロットから 142 °C 付近が結晶融解の開始点となっていることを示した。
 また、ラメラ晶の融解が進むにつれて、融点よりも低い温度領域からラメラの融解に起因した Guinier 関数で記述されるドメイン構造が発達してくることを示した。そして、このドメイン構造は、結晶融解に関わる DSC の吸熱反応が検出できないレベルの温度(172.5 °C)を超える 180 °C においても、なおも未融解の微結晶や強固な 31 螺旋の凝集体を中心にしたと思われる長周期を有する秩序的ドメイン構造の多くが残存していること、さらに高温域の 190 °C においても、このドメイン構造は明確に存在するが、長周期的相関の無い秩序を失ったドメイン構造へと変化することを明らかにした。
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