SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
8 巻, 2 号
SPring-8 Document D2020-010
選択された号の論文の69件中1~50を表示しています
Section A
Section B
  • 伊藤 仁彦, 久保 佳実, 吉川 英樹, 坂田 修身
    2020 年8 巻2 号 p. 337-340
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    リチウム(Li)金属負極の電析時の樹上成長の抑制を主目的とし、シリコン(Si)を代表とした Zintl 元素を微量に Li 金属に添加することができないか検討してきた。本報告では、過剰な Li と少量の Si の単純な接合を可能な限り清浄な環境で形成した場合に、室温で起こる界面反応について報告する。Li/Si 接合では、室温で合金化(ここでは化合物化)が急速に進み、膜厚 100 nm の Si すべてが Li:Si(モル比)が約 4:1 の最も Li リッチな化合物相に変換され、余剰 Li は金属 Li としてその表面に堆積する現象が確認された。界面における相互拡散をより詳細に調べるためには冷却可能で、かつ Li や Si の蒸着源を備えた硬X線光電子分光(HAXPES)は有用であると考えられる。
  • 市川 功, 柳本 海佐
    2020 年8 巻2 号 p. 341-345
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    アクリル共重合体/エポキシ混合系材料はエポキシ成分の熱硬化による反応誘起型の相分離構造を形成し、アクリル成分のモノマー組成を変えることにより、これが大きく変化する。高輝度放射光を利用して小角X線散乱(SAXS)測定を行い、相分離状態の観察を試み、走査型プローブ顕微鏡(SPM)観察像の画像解析結果と併せて考察した。SAXS 測定結果より一次元相関関数を算出し、相間厚みを求めたところ、SPM より観測される構造を再現する情報を得るに至らなかった。これは分離した相間での電子密度差が小さく、X 線の散乱強度が小さいためと考えられ、特にサブミクロンオーダーの長周期の構造情報が得られなかったものと考えられる。つまりスピノーダル分解による相分離構造が、成分濃度の差の小さい2相により形成されていることが示唆される。
  • 堀川 智之, 仙田 剛士, 藤森 洋行, 津坂 佳幸, 松井 純爾
    2020 年8 巻2 号 p. 346-349
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    半導体基板である Czochralski Silicon(CZ-Si)ウェーハにおいて金属不純物のゲッタリング効果が知られる酸素析出物の制御が重要である。一般的な析出形成手法の anneal treatment(AT)は表層の格子間酸素が外方拡散し格子歪みが生じる。熱酸化する rapid thermal oxidation(RTO)は格子間酸素の濃度勾配の抑制に期待されている。そこで、高平行度X線回折によりウェーハ表層の結晶性評価を実施した。サンプルのドリフト現象により格子定数の決定精度が得られなかった。
  • 金子 房恵, 岸本 浩通, 為則 雄祐
    2020 年8 巻2 号 p. 350-353
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ソフトマテリアル中の硫黄構造解析のために S K-edge XAFS 法、特に EXAFS に着目し測定技術開発を行ってきた。その結果 S K-edge でも EXAFS 振動の測定ができるようになったが、解析を行うには S/N が十分ではなかった。そこで、試料冷却時の温度変化の安定化および測定方法について種々検討を行ったところ、EXAFS 測定の精度を向上させることができた。
  • 湯口 宜明, 松山 勇介, 中地 学, 小笠原 正志
    2020 年8 巻2 号 p. 354-356
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    多糖類カードランはグルコースが β-1,3 結合によってつながった直鎖構造をとっており、3重らせん構造をとっていると考えられている。カードランは水に不溶であるが、その懸濁液を加熱することにより熱ゲル化挙動を起こす。食品のゲル化剤として応用されている。この系に対してグルコースを添加するとゲル強度が減少した。ナノ構造を小角X線散乱法により調べた。ナノスケールでの凝集構造および規則的な構造由来の散乱が検出され、グルコースの添加の影響について考察できた。
  • 髙橋 永次, 東 遥介, 末広 省吾
    2020 年8 巻2 号 p. 357-360
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    代表的な有機薄膜太陽電池材料である P3HT ∙ PCBM バルクヘテロ接合薄膜を作製し、その構造を調べるため、放射光による高輝度のX線回折測定を利用して、混合薄膜の回折情報を得た。その結果、製膜後の加熱処理によって P3HT の結晶化が進行することが示唆され、一部の混合薄膜では d ≈ 20 nm 程度の凝集体が存在していることも示唆された。ただし、この凝集体は熱処理前後でその凝集傾向に差は確認できなかった。
  • 伊村 宏之, 山下 友義
    2020 年8 巻2 号 p. 361-367
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     アイソタクティックポリプロピレンの昇温過程(50 °C~200 °C)における WAXS/SAXS 同時測定を行い、結晶の融解過程における詳細な解析を実施した。その結果、ラメラ間周期長の逆数プロットから 142 °C 付近が結晶融解の開始点となっていることを示した。
     また、ラメラ晶の融解が進むにつれて、融点よりも低い温度領域からラメラの融解に起因した Guinier 関数で記述されるドメイン構造が発達してくることを示した。そして、このドメイン構造は、結晶融解に関わる DSC の吸熱反応が検出できないレベルの温度(172.5 °C)を超える 180 °C においても、なおも未融解の微結晶や強固な 31 螺旋の凝集体を中心にしたと思われる長周期を有する秩序的ドメイン構造の多くが残存していること、さらに高温域の 190 °C においても、このドメイン構造は明確に存在するが、長周期的相関の無い秩序を失ったドメイン構造へと変化することを明らかにした。
  • 山下 友義
    2020 年8 巻2 号 p. 368-374
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     200 °C から 300 °C におけるアイソタクティックポリプロピレンの高温溶融状態について、SPring-8 放射光を用いた SAXS 測定を行い、Ornstein-Zernike Plot による凝集構造に関する解析を試みた。その結果、相関距離(ξ)にして 0.5–0.8 nm 程度の構造が観測され、260 °C を超えた付近から、そのサイズの減少傾向が確認された。通常温度上昇に伴い、熱的密度揺らぎにおける ξ は増大することが予想されるが、260 °C 以上での温度上昇に伴う ξ は、むしろ減少傾向が観測され、実際には逆の結果が得られた。故に、この温度領域に残存する構造を熱的密度揺らぎから説明することは困難であり、何らかの微視的凝集構造が高温溶融状態で残存していることが示された。
     いまだ断定はできないが、上記微視的凝集構造が結晶化過程に重大な影響を及ぼす構造体(オリジン)の可能性が示唆され、この構造は結晶融解過程からの履歴を背負い、高温領域まで、その形態や大きさを変えながら引き継がれたものと思われる。
  • 鈴田 和之, 渡邉 紘介, 伊藤 廉
    2020 年8 巻2 号 p. 375-378
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、BL27SU に構築されている軟X線走査型顕微分光測定系を用いて、黒髪に対するジスルフィド結合やその酸化構造(システイン酸)の測定プロトコルを確立し、マッピング測定によって毛髪内分布を評価することを目指した。その結果、毛髪内におけるジスルフィド結合およびシステイン酸分布を可視化することができた。また、ブリーチ処理に用いられる過酸化水素によって、ジスルフィド結合が酸化されてシステイン酸に変換されるという、よく知られた知見が本実験結果からも再現され、軟X線マッピングによる毛髪内硫黄分布の測定が可能であることが示された。
  • 銭谷 勇磁, 鬼頭 俊介, 菅原 健人, 澤 博
    2020 年8 巻2 号 p. 379-383
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ペロブスカイト型結晶構造を有する Ba(Zr,Y)O3-δ (以後、BZY)は、500~700°C の温度領域において 10-3 S・cm 程度のプロトン(H+)伝導性を示すことが知られている[1]。我々は結晶粒界が存在しない BZY エピタキシャル薄膜を作製し、水素雰囲気中で熱処理を施すことで、高いプロトン伝導特性を見出した (0.1 S/cm@600°C, 0.01 S/cm@20 °C, Ea = 0.01 eV)。本特性は、従来の酸素サイト間をプロトンがホッピングする伝導機構では説明出来ない。またバルクの BaZrO3 単結晶も同処理によって高伝導状態になることが確認できた。本研究では Ba-Zr-Y-O 薄膜および BaZrO3単結晶について伝導特性の異なる試料間での結晶構造の差異を明らかにすることで、新しいプロトン伝導特性と結晶構造の因果関係を明らかにすることを目的とした。
  • 鈴田 和之, 小林 翔, 前田 貴章, 渡邉 紘介, 伊藤 廉
    2020 年8 巻2 号 p. 384-387
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    走査型軟X線顕微測定によって、加齢に伴う硫黄元素の毛髪内分布や化学状態変化の評価を試みた。20代と50代の女性毛髪を比較したところ、20代毛髪に比べて50代毛髪ではジスルフィド結合分布の偏りが見出されたことから、加齢に伴って毛髪内におけるジスルフィド結合分布の不均質化が進行することが示唆された。毛髪内構造の不均質性は若年層でもくせ毛において知られているが、加齢に伴うジスルフィド結合分布の不均質化の程度はくせ毛と同等もしくはそれ以上である可能性が示唆された
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