抄録
銅及び銅合金は電気特性と強度特性のバランスに優れ、電線用導体や端子材として最適な材料である。その更なる高強度化のためには、加工変形における原子レベルの構造変化の理解が不可欠となる。その分析手段としては、近年提唱されている引張その場X線回折(以下、XRD)が有望であるが、実用的な厚みの銅材を測定するには高い透過能を有する高エネルギーX線が必要であり、従来型の Si 素子の二次元検出器では感度不足であった。そこで本研究では高エネルギーでも十分な感度を有する CdTe 素子の二次元検出器を用いて 300 µm 厚の銅板の引張その場測定を試行し、比較的短い露光時間でも銅結晶の配向や歪の変化を観測できることを確認した。一方、今回の測定条件では粗大粒の影響を排除できておらず、定量解析には試料揺動などの対策が必要なことも明らかになった。