抄録
ステンレスの溶接現場において、発がん性を有する六価クロムの発生が報告されている。しかしながら、溶接ヒューム中のクロムの組成(六価クロムと三価クロムの割合)を、溶接の条件に応じて定量的に評価した報告は少ない。そこで本研究では、TIG溶接および被覆アーク溶接ヒュームを粒径毎に捕集し、全クロム中六価クロム含有率を、粒径毎に評価することとした。放射光を用いた Cr K 端 XANES スペクトルを取得し六価クロムに特徴的なプレエッジピークを解析することにより、溶接ヒューム粒径毎における全クロム中六価クロム含有率を求めた。その結果、TIG 溶接ヒュームではいずれの粒径においても六価クロムは検出されなかった。被覆アーク溶接ヒュームでは多くの粒径で六価クロムが検出され、0.25~4.3 μm の粒径範囲においては全クロム中六価クロム含有率が約 68% と、他の粒径における含有率の数倍であった。