2021 年 9 巻 1 号 p. 99-103
車載用リチウムイオン二次電池の高速充放電中の正極材料内のリチウム挿入脱離プロセルのメカニズム解明を目的とし、Time Gating 法による透過XAFS法を適用した。Li(Ni, Mn, Co)O2 を正極とする電池試料に対して、高電位領域の 3.5-3.8 V と 3.9-4.2 V の間の電位ステップ後10秒間に、1秒毎の Mn、Co、Ni の K 吸収端 EXAFS スペクトルを得た。一方、完全に放電する時間が20分の 3C のレートと、12分の 5C のレートで充放電を繰り返す間に、約30秒間隔で Quick Scan 測定したスペクトルについても解析を行った。今回行った充電レートおよび XAFS 観測時間においては、XAFS スペクトルの変化は非常に小さく、リチウムイオン二次電池の電気化学反応は正極粒子の最表面近傍でのみ起きていると考えられる。