抄録
磁性体中の磁化分布解析を可能にする放射光計測技術である、磁場印加下での硬X線光電子分光 (HAXPES) 測定法の開発を行った。磁場下での光電子分光は、磁場により光電子の飛行軌道が影響を受け、検出自体が困難となる問題がある。そこで、本研究では高い光電子エネルギーを有する HAXPES を用い、実効的に磁場の影響を低減することで磁場下の HAXPES 計測技術の確立を目指した。表面磁束密度 400 mT のネオジム永久磁石を用いた磁場印加機構を Fe/Pt/Fe 磁性薄膜試料に適用し、磁場下の電子状態観測に成功した。この結果は実デバイスへの応用実現に必要な要素技術として同手法の確立に繋がる。本計測技術を応用することで、スピントロニクス材料等の磁性多層膜中の埋もれた界面における磁化分布と、デバイス機能発現に深く関わる界面電子状態の同時解析が可能になることが期待される。