2015 年 6 巻 1 号 p. 6_29-6_34
本研究では,肘の離断性骨軟骨炎(以下OCD)を現場で早期発見するために,フィジカルチェックからOCDの存在確率を推定するシステムを開発した。
投球障害予防教室に参加した小・中学生221名に,問診・理学検査・投球フォームチェック・肘の超音波検査が行われ,その後,医療機関の二次検査で4名の選手がOCDと診断された。これらの記録をデータベース化し,OCDに関連する項目を統計学的に調査したところ,「過去半年以内に投球肘痛の既往があること」,「投球肘の伸展制限があること」,「片脚立位バランステストが陽性であること」,「肩-肩-肘ラインがずれていること」の4つの因子がOCDと関連していた。これらの因子とベイズ理論を組み合わせることで,フィジカルチェックから各選手のOCD存在確率を推定するシステムを構築した。このシステムを用いることで多数の少年野球選手をスクリーニングでき,OCDの早期発見に寄与することが期待される。