2017 年 8 巻 1 号 p. 8_3-8_7
脳は完成した後もその機能や構造を変えるポテンシャルを持っている。これを脳の可塑性と呼び,記憶や学習の基盤となっている。近年の研究で,脳損傷後に運動訓練を行うことで誘導される脳の可塑性も明らかになりつつある。本稿では,脳に損傷を作成した動物を用いて,運動訓練による脳機能回復,およびその背景にある脳の可塑的変化を調べた基礎研究の成果を紹介する。運動出力を担う脳領域を損傷したサルを用いた研究では,損傷後の積極的な運動訓練が手の巧緻動作の回復を促進すること,損傷後早期の運動訓練がより回復を促進することが示された。さらに最近の研究で,回復の背景として損傷周囲の脳領域の活動の変化,新たな運動出力経路の形成,可塑性に関わる遺伝子発現の上昇が生じることが明らかになっている。これらの変化が,訓練による脳機能回復の神経基盤となっていると考えられる。