社会情報学
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原著論文
損失は協力行動を促進するか:カタストロフゲームによる実験的アプローチ
後藤 晶
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2015 年 4 巻 1 号 p. 1-16

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抄録

東日本大震災に見られるように, 人間は常にいつ生じるかわからない「変動」に直面しながら生きている。本研究においては突然起こる外生的な変動を「カタストロフ」と定義する。その上で, 発生時期においてあいまい性を有するカタストロフの「予告」及び「発生」が協力行動に与える影響を検討する。そのために, 繰り返し公共財ゲームをベースとした新たなゲームである「カタストロフゲーム」を提案し, 実験的な検証を行った。実験時には損失の「発生の確実性」「発生する期間」, そして「発生する損失の規模」を伝えて実施した。その結果, ①カタストロフの予告による貢献額の変化は認められなかった。一方, 予告されたカタストロフの発生によって, ②全てのプレイヤーにカタストロフが発生する条件における貢献額の増加, 一部のプレイヤーにカタストロフが発生する条件において③カタストロフ発生群における貢献額の増加, ④カタストロフ非発生群における貢献額の増加が認められた。本研究では実験ゲームの枠組みによって災害時に観察されてきた人間行動と類似した結果が観察された。損失発生の単純な予告や予測は人間行動に影響を与えないことが示唆され, どのような情報が予告や予測として効果的なものになるのか, そしてなぜ損失発生時に協力行動が促進されるのか, その動機に対する検討が今後の課題としてあげられる。

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© 2015 一般社団法人 社会情報学会
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