社会情報学
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総会シンポジウム報告
政府部門のリスク・ガバナンスと社会情報学
新川 達郎
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2016 年 4 巻 2 号 p. 17-28

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抄録

パブリック・ガバナンスを担う政府あるいは公共部門は, リスク・マネジメントをその責務の一つとしている。リスク・マネジメントの範囲は社会全体にわたる幅広いものであり, 同時にその義務履行については国民・住民など社会一般に対するアカウンタビリティ(説明責任)が求められている。このようなリスク・マネジメントが機能する枠組みを提供するのがリスク・ガバナンスである。リスク・ガバナンスが適切に作動するためには, リスクに係わる膨大な情報の収集・評価・分析・伝達を可能にする現代の情報技術が不可欠であり, それら情報処理の成果をガバナンスのパートナーが共通基盤とすることが必要となっている。今日の公共部門におけるリスク・ガバナンスは, 組織内コミュニケーションや組織間コミュニケーションなどリスク・コミュニケーションと, その結果得られる情報の共有と情報評価が行われることによって成立する。こうしたリスク・コミュニケーションは, また, 災害対策に関しても極めて大きな役割を果たす。リスク・コミュニケーションは, 災害に際してリスクの回避や被災の軽減などのために, リスク情報を提供しその評価を共有し, さらにはその情報の伝搬を進めることによって, 防災, 減災, 救援, 復旧そして復興など災害にかかわるあらゆる局面において, 災害対策の根幹となるのである。リスク・コミュニケーションをいかにして適切に実現していくのかは, 社会情報学が解決すべき大きな課題でもある。

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© 2016 一般社団法人 社会情報学会
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