社会情報学
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原著論文
公益通報者保護法における3号通報保護要件緩和の具体的方策―メディアを通報先とした告発者へのインタビュー調査をもとに
松原 妙華
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2019 年 7 巻 3 号 p. 17-34

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抄録

内部告発報道は市民の知る権利に応えるものとして評価される一方で,情報源である告発者は組織から不利益取扱いを受ける場合がある。日本では,告発者を組織の不利益取扱いから保護するため,2004年に公益通報者保護法が制定され,メディアへの通報は法3条3号で保護されることとなった。しかし,その保護要件の厳しさは法案作成時から指摘されており,3号通報保護要件の見直しは,2018年に法改正に向けて再開した公益通報者保護専門調査会の論点のひとつとなったが,告発経験者や報道関係者の声が法改正に反映されるのか不安な状況がある。

そこで本稿は,メディアを告発先とした告発経験者を対象にインタビュー調査を行い,3号通報保護要件の緩和について検討する。まず,立法及び法改正に向けた議論での3号通報保護要件に関する論点を明らかにし(2章),その論点ごとに,内部告発の正当性に関する先行研究や裁判例を整理した上で(3章),告発者へのインタビュー調査結果を提示する(4章)。そして,それをもとに具体的方策(通報対象者の範囲の拡大,主観的要件の維持,通報対象事実の拡大,切迫性の削除,真実相当性の緩和,特定事由の緩和,不利益取扱い等からの保護,証拠の収集・持出行為の免責,公益性による要件緩和)について考察を加え(5章),最後に,告発者の表現の自由と市民の知る権利を含む内部告発報道の公益性を守る3号通報の重要性を指摘する。

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© 2019 一般社団法人 社会情報学会
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