タイ・チェンマイ県では狂犬病予防対策がなされてきたが,いまだその根絶には至らない。その専門性などから子供らへの伝達が十分とは言えない。本研究では現地状況を踏まえた狂犬病予防のメディア教育開発プロジェクト研究の予備調査として,タイ国内のメディア環境と教育環境の概要を同定すると共に,同県の4校における児童・生徒のメディア環境と情報行動を調査した。回答者は男性が48.6%,女性が51.4%で,母語はタイ語方言が45.6%,少数民族言語が31.2%,タイ語が22.2%であった。「1日のメディア利用時間」は1時間から3時間までの合計で全体の3分の二を占めた。「最もよく利用するメディア」はスマートフォンが最も多く57.4%,続いてテレビが32.4%だった。「最もよく利用するコンテンツ」ではSNSが39.4%,ゲームが33.0%,動画が20.0%と続いた。「ニュースの入手先」のうち,テレビが46.6%,次いでスマートフォンを利用したSNSが27.5%,パソコンを利用したポータルサイトなどが17.1%であった。移動体通信網等や初等中等教育の普及の程度や生活環境を背景に,地域,性別,年齢層,母語によって有意に異なるメディア環境や情報行動が存在することが確認された。タイ語リテラシーの低い児童を最優先すると,動画やゲームを利用した非言語的な狂犬病予防のメディア教材が有効であろう。一方でテレビなど従来のマスメディアを介した広報や啓蒙も継続する必要がある。