社会情報学
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研究
山間部でのICTを活用したボランティア有償運送の導入プロセス
衛藤 彬史
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2019 年 7 巻 3 号 p. 53-62

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抄録

多くの中山間地域では,生活する上で自家用車が必要不可欠であり,自身で車を運転することが難しく,身近に同乗を依頼できる相手がいない場合,移動に多大な困難を伴う。地方行政の財源が限られている中,十分な交通手段を地域で確保するためには地域独自の交通サービスを構築する必要がある。住民がドライバーを担い,需要に応じて利用者を送迎する仕組みの導入を模索する地域が増えつつある中,配車の手配や運行管理といった業務を省力化するツールとしてICTの活用に期待が高まっているが,実践例は少ない。

本稿では,ICTを活用した地域独自の交通サービスを構築し,交通空白地問題を解消ないし軽減している先進的な事例地において,調整役を果たした実務者を対象に聞き取り調査を実施し,どのようにサービスの導入を進めてきたのか,導入過程における技術利用上の課題は何かを明らかにした。導入当初,高齢者を中心としたサービスの利用者にとって(1)決済システムがクレジットカードのみであること,(2)インターネットやアプリの使用が前提となっていることが利用拡大を阻む主な課題としてあったが,システム上の変更に加え,各ドライバーが車内での現金収受に対応することや,近隣住民らが機器を代理で操作する等の協力体制を地域で構築することで克服していることが分かった。

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