社会情報学
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特集「ネオ・サイバネティクス」・論文
社会的自律性の活性度と情動
原島 大輔
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2019 年 8 巻 1 号 p. 31-47

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抄録

情動は,生命システムの作動プロセスの活性度にほかならない。これは,観察記述するシステムの視点によって,次の三種類に分類される。すなわち,機械的情動,生命的情動,そしてそれらの両義的な情動(社会的情動)である。機械的情動は,ある種の自動操縦プログラムであり,他律系の行動を誘発する。この自動的行動は,社会システムの道徳的規範とある程度一致したものになる。なぜなら,メディアの機能によって社会システムが制約した拘束としての現実が,可能な行動の選択肢を有限な範囲にあらかじめ限定しており,機械的情動が誘発しうるのはこの範囲内で選択された行動だからである。これは,基礎情報学のHACS(階層的自律コミュニケーション・システム)モデルでいうと,上位システムの視点からみた下位システムの行動として観察記述される。生命的情動は,自律系が固有の意味と価値を自己形成する自己産出の行為である。これは無限の偶然性から有限の可能性を自己限定する。これが,システムに,規範主義的な道徳性ではない,倫理的な責任をもたらすのである。これは下位システムの視点からみた下位システム自身の作動プロセスとして観察記述される。そして,これらの情動の両義性の感情が,社会的生物としてのシステムの自己感覚を実感させる。これはHACSの社会的自律性の活性度を自己観察記述する方法のひとつである。

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