社会情報学
Online ISSN : 2432-2148
Print ISSN : 2187-2775
ISSN-L : 2432-2148
原著論文
決算発表の早期化と企業の財務報告志向の関係
記虎 優子
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 9 巻 2 号 p. 37-53

詳細
抄録

決算短信による決算発表は,上場会社が法定開示に先立って決算の内容をいち早く公表するものである。通期の決算発表は,「決算期末後45日以内」に行われるのが適当であり,また「決算期末後30日以内(決算期末が月末である場合は翌月内)」に行われるのがより望ましいとされている。本稿では,会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針についての具体的な開示内容を分析することで,企業の目に見えない財務報告志向を定量的に捉えている。その上で,前決算期に上述のような適当であるかまたはより望ましいとされる時期に通期の決算発表を実施できていなかった企業にそれぞれ着目して,企業が内部統制システムの構築に際して財務報告をより重視していることが決算発表時期をより早めることに資するのかどうかを解明している。

検証の結果,本稿では,前決算期には「決算期末後45日以内」に通期の決算発表を実施できていなかった企業であっても,内部統制システムの構築に際して財務報告をより重視していれば当決算期にはかかる時期に決算発表を行えるようになるとの頑健な証拠を提示している。また,前決算期には「決算期末後30日以内(決算期末が月末である場合は翌月内)」に通期の決算発表を実施できていなかった企業についても,やや弱いながらも同様の証拠を提示している。このように,本稿では,決算発表の早期化に寄与する要因の1つに,財務報告の重視という企業の目に見えない認知があることを明らかにしている。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 社会情報学会
前の記事 次の記事
feedback
Top