抄録
大気中では、ステンレス鋼 (SUS) 表面に数nmのクロムオキシ水酸化物(-OH-Cr-O)層が形成される。この層は、不動態被膜中の1成分であり、SUS材の耐食性と密接に関係している。しかしながら、その詳細な構造は未だ明らかになっていない。そこで今回、放射光を用いた高分解能X線光電子分光(XPS)によってこれを明らかにした。取り扱ったサンプルはSUS304およびSUS440C鋼板である。SUS304や440Cは典型的な鋼板材料であり、これらの不動態皮膜に関する知見を得る事で、耐食材料開発が促進されると考えられる。