科学・技術研究
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原著
咬筋部筋電位計測における低気温環境下での出力特性とその評価
石川 佳歩小林 勇登松橋 将太小野寺 良二宍戸 道明
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 10 巻 2 号 p. 131-137

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抄録

近年、生産年齢人口の減少にともない、介護サービス分野における人的資源の不足が深刻化している。この問題の対策として、福祉機器の積極的な活用による介護サービスの質の維持が挙げられる。このような背景を分析し、著者らは頭部動作のみによって機器の制御が可能なポインティングデバイスを開発した。しかし、本デバイスは、低気温の環境下において筋電計の動作不良を引き起こす。この要因として、環境温度の低下による電気的ノイズの増大が挙げられる。そこで、筋電位サンプリングのノイズ耐性を高めるため、筋電位の検出方法を双極誘導型にした。さらに、ノイズを含んだ筋電位波形であっても正確に咬合を判定するため、複数クリック検知機能を実装した。本研究では、低温(1~5 ℃)、中間温(9~13 ℃)および常温(23~24 ℃)におけるFPDの操作試験を実施した。そして、タスク成功率とタスクの成功に要する時間(タスク所要時間)によって、環境温度による動作信頼性を評価した。その結果、環境温度によらずタスク成功率は95 %以上となり、タスク所要時間は0.5 sec程度であった。また、電気的ノイズの重畳や誤動作は確認されなかった。一方で、環境温度によらず一部の被験者からは、「顎が疲れた」や「長時間の操作には向かない」といった自由意見を得た。この原因として、本デバイスの操作時に日常で使われる咬合より大きな力が必要であったことが考えられる。そのため、この咬合力と疲労度の関係を明らかにし、本デバイスのユーザビリティを改善することが求められる。

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