抄録
水産海洋分野の産学連携・地域連携活動を事例とし、産学連携・地域連携活動に取り組む大学役員及びそれに積極的に取り組む一般教員のインセンティブ構造を明らかにした。結果としては、博士、修士で意識の差が見られ、研究者、実務家教員等により産学連携に対する考え方の違いが明らかとなった。次に、具体的なインセンティブについて明らかにするために2値ロジスティック回帰およびCARTの分析をおこなったところ、応答Yの「研究費に反映」を分類する因子Xは、「給与・賞与に反映」と「研究資金の支援」となった。特に「研究費に反映」のY=1:熱心な教員としては、これら因子Xの重要度5と4を選択した回答者が該当しており、モデルの予測精度を確認したところ、その適合確率は0.87以上となった。つまりの因子Xの「給与・賞与に反映」および「研究資金の支援」を「5:極めて重要」「4:やや重要」と考える者が「熱心な教員」と定義され、言い換えれば、これらが同時にインセンティブとして効果的と言えるのではないかと示唆された。政策的には、ただやみくもに研究費を増やせばいいという理論ではないが、研究費をとる→社会(産学)連携が進む→研究費をとる→‥→さらに大きな研究費がとれる というサイクルの結果も関係している中で、過度な一極集中は防ぎつつも「研究費に反映(重要度)」がその原動力あるいはトリガーであるとみなすことが適当であろうと考えられる。