科学・技術研究
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原著
時間ゲート型BCIによるアクチュエータ制御と駆動閾値の最適化
齋藤 夕綺小野寺 良二宍戸 道明
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2022 年 11 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

近年、少子高齢化の進行にともない、要介護者の増加および介護従事者の負担増加が深刻化している。要介護者の自立支援と生活の質向上を図る試みのひとつとしてBrain-Computer Interface(BCI)の応用が挙げられる。そこで著者らは、脳波の集中と弛緩状態の信号を応用し、シリアル動作に特化したBCIシステムを構築した。既往研究では、従来のシステムの課題であった時間の遅れを軽減するために、新しいモータ制御手法としてサンプリング脳波信号の処理においてゲート時間と定義した新しい評価区画の考え方を導入した新システムを構築した。本研究では、さらなる応答性の改善を目指し、新システムにおける最適な駆動閾値を検証した。結果として、閾値40、50において課題成功率は68 %以上と高値を示し、従来のシステムと比較するとおよそ10 %の向上が確認された。さらに、Friedmanの検定において有意差が認められ、対応のあるt検定では閾値40、50において有意差が認められた。この結果から、閾値40、50において課題成功率が有意に向上し、随意的なモータ制御が可能であると判断できる。誤作動率は、閾値にかかわらず21~31 %を示し、Friedmanの検定においては有意差が認められなかった。一方で、閾値の増加にしたがって停止誤作動の占める割合が増加した。また、閾値60、70でモータ駆動を成功した被験者は、脳が極度の集中状態となり、Task区間の間モータが駆動し続けてしまうことや、Rest区間に移行した後もモータ停止までに時間を要した。BCIの普及促進を図るうえで安全性の担保および使用者の意図に従った機器制御は必須であるため、モータの駆動・停止において安定した制御が可能であった閾値40、50が最適な閾値であるといえる。

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