科学・技術研究
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原著
屋根葺き材料としてのスギ製こけら板の客観的選別方法の開発
風呂井 玲子来田 宣幸横山 敦士
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2022 年 11 巻 1 号 p. 29-35

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抄録
日本の伝統的な屋根材であるこけら板は、伝統的な技法によって手仕事で生産されている。製品の選別は主に葺師に委ねられており、その選定基準は目視が主体で、定量化されていない。そこで本報では、こけら板選択時に葺師はどのような点に注意を払っているのかを明らかにするため、葺師を対象に半構造化インタビューを行った。得られた発話はテキストマイニングの手法で分析し、着眼点や評価基準を分類したところ、すべての発話から分析対象となる622の意味単位が抽出され,18のカテゴリーに集約できた。その結果、葺師の着眼点はこけら板の「形」(77.3 %)と「材色」(22.7 %)に分類され、「形」への注目度が比較的高いことが分かった。また、こけら板の部位では、施工後に表出する“小口”の状態に関する発話が比較的多くみられ、この傾向は「形」「材色」のいずれの区分にも横断的に確認できた。さらに、スギ製のこけら板に望ましい板幅は125mmを超えると否定的評価が増加する傾向が示され、葺師はスギという樹種の特性を考慮して理想的な板幅を提案したと推察できる。今回の調査によって、材質をスギに限定した場合、より狭い板幅でも施工できる可能性が示された。このことは、従来考えられていたより低齢級のスギからもこけら板を採取できることを意味し、林産資源の有効活用やこけら板の低価格化にも貢献しうると考える。
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