2022 年 11 巻 1 号 p. 47-51
UK-1およびAJI9561はStreptomyces sp.より単離されたサイトトキシンである。その構造は2つのベンゾオキサゾール骨格からなる特徴的なもので、マウス細胞株B16、マウス白血病細胞P388、さらにヒト子宮癌細胞HeLaなどのがん細胞に活性を示すことが報告されている。本論文では第1報のN-アシル誘導体を経由する合成に引き続き、新たにDDQ(2,3-Dichloro-5,6-dicyanobenzoquinoe)および活性炭素(Darco KB®)を用いたUK-1、AJI9561の効果的な全合成について検討したので報告する。N-アシル誘導体を経由する方法では、AJI9561合成に伴う三置換ベンゼン誘導体の縮合反応からのベンゾオキサゾール合成が23 %と低収率となってしまったが、DDQまたはDarco KB®を用いることにより対応するベンゾオキサゾールの合成収率が60 %以上と大幅に改善された。結果的に今回の改良合成法により、合成工程を短縮すると共に、AJI9561の全合成収率について、N-アシル化法で8工程:約11 %だったものが、DDQまたはDarco KB®法により6工程:約30 %と大幅に改善することができた。