2022 年 11 巻 1 号 p. 59-62
高分子ネットワークとネマチック液晶物質から構成される調光液晶複合膜(LCLCFs)の構造をLCLCFsの表面および断面の走査電子顕微鏡(SEM)観察によって調べた。LCLCFsとして、ネマチック液晶物質による光散乱現象によって白濁した初期状態をもつノーマルモード型LCLCFsとネマチック液晶物質が垂直配向を形成し、透明な初期状態をもつリバースモード型LCLCFsを用いた。ノーマルモード型LCLCFsでは、LCLCFs全体に液晶滴が偏らずに分布した構造を形成していた。一方、リバースモード型LCLCFsにおいては、ネマチック液晶物質がPET電極基材近傍に多く存在し、高分子ネットワーク-液晶層/高分子層/高分子ネットワーク-液晶層の三層構造を形成していた。リバースモード型LCLCFsでは、PET電極基材表面に垂直配向薄膜が塗布されており、この垂直配向薄膜は光ラジカル重合で生成する高分子との相溶性が低い。この性質によって、生成高分子がPET電極基材近傍を避けて成長するため、リバースモード型LCLCFsでは三層構造が形成される。また、ノーマルモード型とリバースモード型のLCLCFsの構造の違いは、ノーマルモード型LCLCFsがリバースモード型LCLCFsよりも高分子ネットワークのPET電極基材への接着量が多いことを示唆する。これは、リバースモード型LCLCFsがノーマルモード型LCLCFsよりPET電極基材から剥離しやすいことに一致する。