抄録
本稿では、自動運転車の社会的受容に際して、人間中心AIという指針がどのように反映され得るのかを、自動運転車開発の利点として挙げられている交通事故件数の低減との関連で考察を行う。最初に、自動運転車開発と社会実装のメリットと技術開発の現状との乖離について指摘する。第二に、自動運転車の社会的受容に関連する最近の研究動向を説明し、それを踏まえて、第三に、ジレンマ問題から社会的ニーズへ目を向けることの重要性を述べる。第四に、自動運転車の社会的ニーズにおける対人交通事故件数低減というメリットの位置づけを取り上げる。ここでは、自動運転車の社会導入の利点として、しばしば最初に交通事故件数の低減が挙げられるが、実際の技術開発の点ではどのように位置づけられているかを考察し、必ずしも交通事故件数を低減するための技術開発が推進されてはいないという点を指摘する。そして、第五に、交通事故件数低減の中でも、対人交通事故件数低減が重要であり、その点における倫理的社会的受容性に目を向けることの重要性を論じる。第六に、日本の交通事故の統計から明らかになる傾向を取り上げる。そして、第七に、交通弱者の交通事故件数を取り上げ、対人交通事故の様態別に、交通弱者の死亡・重症化事故が起きている特徴について考察する。そして、これらに対応し、交通弱者の交通事故件数を低減する自動運転技術の開発を優先化することの重要性を論じる。