抄録
近年の介護・福祉施設では、少子高齢化にともなう生産年齢人口の低下によってもたらされる「介護人材不足」の課題が顕著化している。こうした介護・福祉施設の課題解決のひとつとしてICT化が挙げられるが、ICT化による課題も同時に表面化する。それは、輻輳による通信速度の低下である。本研究では、輻輳が引き起こす通信の課題解決のため、ネットワークシミュレーションを行い、自身が実装した輻輳制御アルゴリズムであるReactive TCPの性能評価を行った。実験では、通信量が増加していった際のスループットとパケット損失数を計測した。Reactive TCPは、損失ベースと遅延ベースを状況に応じて使い分ける方式としており、パケット損失を輻輳の指標としている。このアルゴリズムでは、通常は損失ベースで通信を行い、輻輳を検知しない場合には引き続き損失ベースでの通信が行われる。輻輳検知の際、遅延ベースに切り替えて処理を行い、損失ベースによる通信が再開される。実験には3種類のデータを用意し、それぞれデータ①からデータ③とした。データ①はパケットが破棄されたタイミングで切り替え、データ②は切り替えのタイミングを遅く、データ③は切り替えのタイミングを早くしたアルゴリズムとなっている。実験結果より、スループットとパケット損失数の両方でデータ①のアルゴリズムが高い効果を発揮した。しかし、実際のインターネット環境とは異なるため、実際のインターネット環境を用いた実験の検討が必要である。