抄録
スポーツスキルの動作時に教示を与えることでパフォーマンスの変化が生じることが明らかにされてきた。本実験では理科の実験における操作パフォーマンスに対する教示の影響を検討し、スキルのパフォーマンスに与える教示の影響をより広く明らかにすることを目的とした。実験は、12名を対象に室内にて椅子に座った状態で実施した。操作前に教示が印刷された紙を提示し、指示に従って操作を行うように求めた。課題は、水の入ったビーカーからチューブへスポイトを使って設定量の水を採取するよう求めた。操作の正確性を重視する条件や、操作のスピードを重視する条件が含まれている教示を設定した。また、同じ意図であっても表現の異なる教示も含め、合計で5種類の教示条件を設定した。操作の時間と移した水の重量を計測し、教示ごとに操作パフォーマンスを評価した。操作の操作時間と操作の正確性を尺度にクラスタ分析を行った結果、教示条件により正確性が変動するグループと、変動がないグループに分かれた。正確性が変動したグループでは操作時間と操作の誤差がトレード・オフ関係であることが示唆されたが、正確に教示条件ではパフォーマンスの低下による誤差の増大がみられた。教示条件により設定値誤差の変動がないグループでは操作時間に変動があったものの、設定値誤差に変化はなかった。