科学・技術研究
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原著
液晶調光フィルムを用いた光質連続可変照射系の文化財照明への応用
縄文打製石器への実践
中山 敬三中村 一郎宮路 淳子中山 満子
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 14 巻 2 号 p. 111-116

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抄録
照明の光質(光の柔らかさ)は被照射体の表面の凹凸情報や色情報の見えに大きく影響を与える。一般的に、写真撮影時に柔らかい光を作り出すにはトレーシングペーパや布などを光拡散材として用いる。そのため、光質の調整は光拡散材の交換やそれらの移動などで実現する必要があり、微調整が容易ではない。さらに、機材の転倒などによる被照射体の損傷リスクも高い。希少価値性の高い文化財の記録写真は表面の凹凸情報や色情報などを多角的に記録することが本来望ましいが、これらの理由から、同じ文化財に対して異なる光質で写真撮影が系統的に行われることは大掛かりとなるため少ない。本研究では、窓などに貼る建材として普及し始めている液晶調光フィルムを縄文打製石器写真撮影時の光質の柔硬調整に応用した。提案の照射系は機材の移動を伴わず電気制御のみで連続的に光質を変えることが可能なうえ、調整に際しても被照射体への物理的損傷リスクがないため、文化財写真撮影時の照明として極めて有用である。さまざまな光質条件で縄文打製石器を撮影した結果、光沢のある状態からマットな状態までを連続的に変化させることができた。黒曜石の場合、硬い光での撮影時は凹凸情報が読み取りやすい写真となり、柔らかい光で撮影した写真は色味の情報が読み取りやすい傾向が示された。また、本手法は、博物館・美術館において光質をリアルタイムに変更して鑑賞者の興味の視点を誘導する新しい展示照明としての可能性も有している。
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