抄録
コマツナおよびホウレンソウの味覚値に及ぼす硝酸イオン含量の影響を糖度(Brix値)計と味覚センサーを用いて調べた。試料として、コマツナおよびホウレンソウの市販品および契約農家で栽培されたもの約30検体(12月~5月)を用いた。味覚測定用試料は、コマツナおよびホウレンソウを電子レンジで60~120秒加熱したのち、フードプロセッサーで粉砕し、さらに、2倍量の水を加え、ミキサーで撹拌して調製した。味覚値は味覚センサーを用いて、酸味、塩味、旨味、苦味雑味および渋味刺激の5先味と旨味コク、苦味および渋味の3後味を測定した。その結果、硝酸イオン含量はコマツナ、ホウレンソウともに、Brix値に対しては負の相関(それぞれの決定係数(R2):0.55、0.29)、塩味、苦味雑味および苦味に対しては正の相関(決定係数(R2):0.94, 0.83, 0.70(コマツナ), 0.94, 0.74, 0.34(ホウレンソウ))を示した。また、硝酸イオン水溶液の味覚値から、塩味は硝酸イオンそのものを計測している可能性が高いこと、また、苦味雑味と苦味は、硝酸イオン含量と比例して増大する苦味成分を検出していることが考えられた。以上のことから、コマツナおよびホウレンソウの硝酸イオン含量は苦味など不味いと評価される呈味に対しては正の効果、また、おいしいと評価される甘味に対しては負の効果を及ぼすことがわかった。