抄録
人間の精神状態はスポーツや知的作業の結果に影響を与え、とくに高い集中状態のとき良好な結果を得ることができる。この集中力向上のアプローチのひとつにバイオフィードバック (Biofeedback: BF) が挙げられる。BFは、工学的な手法を用いて生体情報を利用者の視覚あるいは聴覚へとフィードバックし、心身の随意的制御を可能とする技法である。このとき、生体情報の呈示手法の違いにより集中力向上効果には差異が生じると考えられる。そこで本研究では、集中力向上を目的としたBFの装置の開発設計を行い、視覚と聴覚のBFにおける集中力の向上効果を比較した。とくに(1)BF前後における集中力の向上度、(2)継続的なBFによる平均集中力の推移について評価した。実験(1)では、被験者は12名とし呈示手法により6名ずつに分け、各被験者の安静時とBF時の平均集中力を比較した。その結果、視覚呈示法は6名中5名、聴覚呈示法は6名全員の集中力が向上した。一方、実験(2)では被験者3名とし、実験(1)と同様の実験を10日間継続して行った。その結果、両呈示手法にて集中力の向上が確認された。しかし、関心意欲の低下や、聴覚呈示法が困難であるために向上効果にばらつきが生じるなどの問題点が明らかとなった。以上の結果より、BFの効果は感覚器官の特性に依存しないことが明らかとなった。そのため、BFの装置の設計では呈示手法のデザインが重要であるといえる。