抄録
炭素繊維強化複合材料の試作品の多くは、オートクレーブ成形で技術者が手作業で製造する。オートクレーブ成形は、成形型にプリプレグと呼ばれる樹脂を含浸した炭素繊維を積層し、バギングフィルム(真空脱気用包材)を用いてバギング(袋詰め)し、内包された空気や揮発物を真空除去しながら、窯(オートクレーブ)内で加熱・加圧してプリプレグを硬化させる成形方法である。手作業ゆえに、個人差が生じない様、作業内容を示した手順書が必要となる。しかしながら、品質管理の難しさを克服するための、作業者が十分なスキルを獲得するカリキュラムは無く、スキルのレベルを明確に検定するシステムも存在しない。また、手作業の内容や成形道具の使用方法を明確にした文献はない。このため、製造現場では、経験の浅い技術者が作製した製品における不良が発生している。そこで本研究では、オートクレーブ成形のプリプレグ積層工における熟練技術者の特徴を明らかにすることを目的とした。プリプレグ積層工程での作業を撮影し、作業分析を行った。さらに、熟練技術者へのヒアリングを行い、各作業を行う理由を明確化した。この結果、熟練技術者はコーナー積層において、折り紙を折るようにプリプレグシートを折りたたみ、プリプレグシートに折り目を付けることで、プリプレグシートの成形型への密着性を向上させ、的確にハサミでのプリプレグシートの裁断を行っていた。さらに、ドライヤーの使用を必要最小限にすることで、プリプレグシートの熱軟化と粘着性を制御しながら賦形性を向上させ、不要なプリプレグシートの粘着を防止していた。