2016 年 5 巻 2 号 p. 163-168
自動車のCO2排出規制における目標達成には、車体の軽量化技術が急務である。樹脂化に最も重要なのが、車体剛性を低下させないことである。それには材料の曲げ弾性率および強度の向上が必須とされる。衝突時の乗員や歩行者の安全性も考慮して、樹脂の破断や飛散を低減するために衝撃特性の向上も重要である。樹脂成形工法として、射出成形、プレス成形、RTM(Resin Transfer Molding)法、オートクレープ法、プリプレグ法があるが、射出成形以外の工法は、生産性が低く、製造コストが高いため、一般車両に採用できない課題がある。そこで本研究では、生産性に優れるポリプロピレン(PP)をマトリックス樹脂に用い、射出成形が可能な炭素繊維強化ポリプロピレン(CFPP)の機械的特性を向上させるために、機械的特性および繊維/樹脂の界面せん断強度(IFSS)を評価した。その結果、マイクロドロップレット法を用いて測定したIFSSと引張強度との間に強い相関性があることを確認した。また、表面処理法の改良によるIFSS向上の検討を行った結果、マレイン酸変性PPエマルジョンとシランカップリング処理を施したCFPPのIFSSが24 MPaを計測した。これは未処理CFPPの12 %の向上になった。シランカップリング剤と繊維表面およびマレイン酸変性PPエマルジョンとブロックPPとの間に相互作用による効果が認められた。この補強効果により、CFPP射出成形品としての開発に繋がることが示唆された。