科学・技術研究
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原著
打刷毛による叩打動作時の筋活動計測
岡 泰央弓永 久哲高井 由佳後藤 彰彦
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2016 年 5 巻 2 号 p. 169-178

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抄録
書画の装訂様式に掛軸がある。掛軸は鑑賞時に床の間に掛け、用が済めば下から巻き上げて箱に収納する。掛けた時には大きな反りを生ずることなく真っ直ぐに掛かり、下から巻き上げる際には折れ傷を生じさせないしなやかさが必要である。そのために、書画の裏面には和紙による裏打ちが4層施される。和紙の接着には小麦澱粉糊が用いられる。掛軸のしなやかさを保つために小麦澱粉糊を10年間かけて発酵させる。微生物分解によって糊は低分子化して乾燥後もしなやかさを保つ接着剤となる。しかし、低分子化した接着剤は、和紙を接着するだけの十分な接着力を有さない。そのため、接着された和紙の表面を打刷毛と呼ばれる刷毛で叩いて接着を促進させる。強く叩き過ぎると和紙の表面を痛める。弱すぎると接着の促進ができない。この叩く動作には高い熟練度が必要である。一般的に熟練者は長時間にわたる作業でも安定して叩く動作ができるが、非熟練者は短時間で把持する右上肢に疲労を訴えることが多い。本研究では、熟練者と非熟練者を被験者として刷毛を把持する右上肢の9筋についての筋活動を計測する。これにより熟練者と非熟練者がそれぞれにどのような筋活動を行っているのかを解明することを目的としている。さらに、%MVCを算出することにより、それぞれの被験者の筋疲労についても検証する。熟練者が非熟練者に比べて効率的に作業を行っていると考えられる一因が、明らかに異なる筋活動と筋疲労の計測結果から証明することで、非熟練者の技術習得の一助となることが期待できる。
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